【2018/05/04 ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2018 "ソワレ・スカルラッティ" @東京国際フォーラム ホールD】
ゴールデンウィークは油断すると寝正月ならぬ寝ゴールデンウィークになりがちなので、今年もラ・フォル・ジュルネに行ってきました。
ラ・フォル・ジュルネの記事を書くのは一昨年前に続き、2回目です。
実は昨年もチェンバロ以外の公演を聴きに行ったので、3年連続になりました。 そろそろ毎年行ってると言ってもいいでしょうか。
前回の記事は、読むとわかるラ・フォル・ジュルネな感じでしたので、イベント概要につきましてはそちらを読んで頂きたく存じます→★(笑)として、今回は一昨年前からの変更点などもお伝えしたいと思います。
◇ 会場に池袋が加わりました。
場所は東京芸術劇場。レポート的にはこちらに伺うのが正解ですが、丸の内エリアの方が近いのと、チェンバロ公演がなかったので東京国際フォーラムを選びました。
芸劇のアイコン、パイプオルガンで演奏される大バッハのオルガン曲プログラムとかあれば迷わず池袋にします。ぜひお願いします。
◇ オ・ジャポン→TOKYO になりました。
以前は東京都外でも開催されていたのですが、池袋を加え『東京都の音楽フェス』として推していこうという意図でしょうか。
◇ 「熱狂の日」という日本語訳が消えました。
一昨年前の記事で褒めた手前、苦笑いです。 きっと「フラ語のままのがシャレオツじゃね?」ということでしょう。 熱狂の日をやめちゃったからか、LFJという省略が見られるようになりました。
さて、LFJ今年のテーマは
「UN MONDE NOUVEAU モンド・ヌーヴォー - 新しい世界へ -」
ここ数年の流れどおり、幅広く解釈出来るテーマですが、新天地で頑張った作曲家たちをメインに据えているようです。ホール名も亡命作家から取られていますね。
私が選んだ公演はこちらです。
公演番号:M258 “ソワレ・スカルラッティ”
5月4日 (金・祝) 22:00~22:45
東京国際フォーラム ホールD7:ネルーダ
チェンバロ:ピエール・アンタイ
一昨年前のラ・フォル・ジュルネ、昨年のラモーのデュオコンサートと一方的にアンタイさんにご縁を感じたのと、スカルラッティが一応テーマに沿った作曲家に挙げられていたこともあり、こちらに決めました。
自らの意志で母国を離れ、新しい世界へ移住した作曲家たちとカテゴライズされていたドメニコ・スカルラッティ。
彼はナポリの出身で、ポルトガルのマリア・バルバラ王女のチェンバロの先生になり、彼女がフェルナンド6世に嫁いだ際に、スペインに移住します。
(イタリア→ポルトガル→スペイン、先日見た水曜どうでsy…ボフッ∑(゚Д゚))
スカルラッティは555曲ものソナタを作曲しました。 繰り返しを入れて、1曲、3分程度の作品が多いので、クラシックの中でも、今のポップスに感覚が近いのではないでしょうか。
スカルラッティ聴きに行くんだと言ったら、「インディ・ジョーンズ?」と言われました。 クリスタル・スカルは関係ありません。
ピアノのコンサートのアンコールなどで演奏される機会もそこそこあるとはいえ、まあスカルラッティはマイナーです。
曲の後半に転調し、スケールで鍵盤を縦横無尽に駆け巡り、両手をクロスさせたり、高音や低音に激しく飛んだり、何曲か聴いているとスカルラッティ節みたいのがわかってきます。
では、ここで問題です。
スカルラッティと同期の作曲家と言えば?
ヒントは、スカルラッティは、鍵盤楽器の主流がピアノになる前のチェンバロ時代の作曲家です。
チェンバロ時代の有名な作曲家と言えば……
そうです。 答えは、J.S.バッハとヘンデル。 3人とも1685年生まれです。花の85年組(笑)。
さて、555曲もあるソナタの中からLFJでどの曲を演奏するのか、案内には“ソワレ・スカルラッティ”としか書いてありません。
会場でプログラムをもらいました。が、曲名が全く書いてないです。
印刷ミスでしょうか?
訝しそうな顔をしたからか、スタッフの人が教えてくれました。
「演奏する曲はアンタイさんがその時の気分で決めることになってるんです」
( ゚д゚)
「アンタイさん、そろそろプログラムを提出していただけないでしょうか」
「えー、そんなのないよ。気分で演奏するから」
(私の勝手な妄想です。)
クラシックだと曲順をきめてその通りに演奏するのが当たり前ですが、ロックバンドもポップスアーティストも落語家も出さないし、なくても困らないけど目から鱗でした。
少し重めの扉の向こう側の会場は、どうやら会議室ではなさそうです。 確かに会場の頭文字がG(ガラス棟会議室のGと推測)でなくDです。
きっと前回の会議室は照明が上手くいかなかったのがピエール的に不満だったに違いありません。
「この前の会議室さ、別にいいんだけど、老眼じゃないけどちょっと暗くてやりづらかったよね。老眼じゃないけど舞台用の照明ってやっぱりいいよね」
とか何とか言ったのかも、いえ、言ってないです(しかし一昨年は眼鏡を取り出し見えずらそうに楽譜を見ていたのは事実です)。
会場も前回より広くなりました。椅子も映画館のように座り心地の良いものになりました。
ふかっと座ってくるっとまわりを見回してみると満席です。
LFJはクラシックコンサートとしては客層が若いことが特徴です。
仕事や勉強から解放されるゴールデンウィーク(LFJの関係者を初め、サービス業の皆さんに感謝)にリーズナブルな値段でたくさんの公演が行われるLFJ、日本ではやっぱり唯一無二かなと思います。
時間になり、ピエール・アンタイさんが舞台に現れました。
楽譜はいつもの通りクリアファイルに入っているようです。 555曲入っている厚さではないので、弾く曲は絞られていたことになります。
まあ、555曲収めるとなるとゼクシィの如き鈍器になる事請け合いですし、そもそも全曲開演直前に見るのは不可能なので、当然と言えば当然です。
スカルラッティの45分間はあっという間に過ぎました。
ソワレ・スカルラッティのソワレはフランス語で夜公演という意味ですが、昼間の陽射しを感じさせるような演奏でした。
ナポリ、リスボン、マドリードの肥沃な大地で、太陽の恵みが降り注がれた真っ赤なトマトのようにスカルラッティの曲たちは生み出されていったのかもしれません。
では、今日聴いた中で一番のオススメを。
えーっと、長調だけど、切なくて、私が聴いたことある中では唯一の泣きたくなるスカルラッティです。 つまり、真っ赤な太陽ではないスカルラッティです。
ま、世の中そんなものです。 明るく華やかなことで有名なモーツァルトの曲で、なぜか短調の方が素敵に聴こえる人が結構いるように。
このコンサートは、チェンバロの日の2週間前でした。
久々にクープラン以外の音楽に触れ、気分転換し、そこからまたクープランに戻っていったのですが、
クープランのリレーコンサートに興味深いチラシが置いてありました。
クープランはギリギリ仕上がった感じでかなり大変な思いをしたのですが、もう少し弾きこんだらクープランの神と出会えたかもとも思えた得難い体験でもありました。
そんなわけで2曲だけエントリーしてみました。 555曲中2曲、僅か0.36%とはいえ、この先勢い余って増やしたりせずに丁寧に向き合うことを誓います。
thanks for coming by.
written by coquemomo