チェンバロの果実 ♪

ピアノのようなかたちをした鍵盤楽器チェンバロ。にほんでいちばんやさしいチェンバロのあれこれ。

カプラー操作とかで考えられる過ちを全て犯したんじゃないかという話【2018/05/20 チェンバロの日!2018 @松本記念音楽迎賓館】

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今年のチェンバロの日は、フランソワ・クープラン生誕350年を記念し、ほぼクープラン一色に染まりました。

その中でも、目を引くのは1階のサロンで行われたクラヴサン曲集全曲リレーコンサート♪

2日間のイベントの開始から終了までを余すところなく使って、クープランクラヴサン曲集の全曲が演奏されました。

フランソワ・クープランバロック時代のフランスの作曲家。 クープラン家は音楽家一族で、他にも伯父のルイ・クープランなどがいますが、断り書きなくクープランと言うとこのフランソワのことを指します。

クープランとも呼ばれ、バッハ一族におけるJ.S.バッハ大バッハのような感じですね。

クープランクラヴサン曲集を4巻出しました。

1曲は2ページくらいの短いものが多く、7曲くらいをまとめて1つのオルドルとしています。 組曲みたいなものですが、少ないものだと4曲から多いもので23曲もあり、ある程度形の決まっている組曲よりも自由な印象です。

1日目に1巻と2巻(第1オルドル〜第12オルドル)、2日目に第3巻と第4巻(第13オルドル〜第27オルドル)が演奏されます。

このリレーコンサートの参加条件はクープランの音楽が好きなこと。

私も参加可能でしたので、エントリーしました。

私が申し込んだのは…

My Set List

F.クープランクラヴサン曲集 第3巻より

第13オルドル
◇ フランスのフォリア、あるいはドミノ
◇ 煉獄の魂

第14オルドル
◇ ジュイエ (duo Rose)

第15オルドル
◇ ショワジのミュゼット (duo Rose)
◇ タヴェルニのミュゼット (duo Rose)

第16オルドル
◇ レティヴィル (duo Rose)

第18オルドル
◇ テュルビュラン(騒々しさ)

F.Couperin : Pieces de Clavecin, 3e livre

les Folies Francoise, ou les Dominos (13e ordre)
l'Ame-en Peine (13e ordre)
la Julliet (14e ordre)
Musete de Choisi (15e ordre)
Musete de Taverni (15e ordre)
la Letiville (16e ordre)
le Turbulent (18e ordre)

1つのオルドルを通しで弾く人もいる中、何というバラバラ参加。

リレーらしくていいじゃないとも言えるかもしれません。 何だか小学校の運動会みたいです。

飛び飛びの参加になったのは、デュオ・ローズでの連弾の参加のためです。

このクラヴサン曲集には3段で書かれている曲が何曲かあります。

普通は2台チェンバロで演奏しますが、今回は楽器が1台なので、デュオ・ローズの相方の薫子さんと相談して、1台3手の連弾での演奏にチャレンジしてみました。

さて、2日目は13オルドルから。

ソロで参加する「ドミノ」と「煉獄の魂」は13オルドルなので、早速出番が回ってきます。

「ドミノ」はちょっと珍しくて、16小節の曲が12個合わさって1曲になっています。

12個それぞれにタイトルとドミノ(仮面舞踏会用の頭巾付きマント)の色が記されていて、まるでオムニバス映画のサントラのようです。 30秒から40秒で次々と次の曲に進みます。

7つ目と8つ目の間にカプラー操作で上鍵盤を連動させて後半を2列で弾く構成にしました。

一般的には上鍵盤の両脇を押して連動させることが多いのですが、この楽器は下鍵盤の奥にある白いポッチを押すタイプです。

案内に書いてありました。

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読んでおりましたとも。

でも、ですね、実際に曲の間で操作しようと思ったらなぜか手が上鍵盤の横を押そうとしてしまったのです。

10秒くらい押したでしょうか。 動かないことに気がついた私の目に白いポッチが映ったようで、そこを触るといとも簡単に動きました。

知ってても間違えちゃう人っているんですよね。

私が見た範囲では私だけでしたが。

「煉獄の魂」はカプラーを戻して1列にしますが、そこはスムーズに出来ました。

次のカプラー地獄がやってきたのは、ローズの連弾のミュゼット。

連弾曲は全て2手を担当する方が下鍵盤を、対旋律のみを担当する方が上鍵盤を弾くことにしました。

主旋律と対旋律は同じあたりの鍵盤、時には同じ音を弾くので、鍵盤は必然的に連動させないことになります。

ミュゼット2曲は私が片手で対旋律を担当します。

ショワジのミュゼットは牧歌的なのどかな感じの曲です。 柔らかく暖かい雰囲気で曲は始まりました。 デュオ・ローズのどちらも鍵盤が連動していることに気がつかずに。

ここからの私は、状況が頭脳に伝わる前に身体が動いており、無意識とか反射とか言えばいいのでしょうか、とりあえず苔桃さんとして話を進めてみます。

ショワジのミュゼットが始まり、程なく苔桃さんの指は不思議な感覚に襲われます。

鍵盤の上にある指が力を加えていないのに下がりこみます。

電動アシスト!

そんなわけありません。

自動演奏中の電子ピアノの上に指を置いていれば、この感覚になるかもしれませんが、18世紀の楽器の復元です。電動するにはまだ早過ぎます。

では、マリー・アントワネットの呪い?

その可能性は全くないとは言い切れませんが、お昼前の爽やかな時間に、そんなことする霊はあまり例がありません。

本番中の苔桃さんはそんな可笑しな発想はせずに、動きを指で感じるとほぼ同時にカプラーを手前に引きました。

カプラーの引き方はバッチリです。さっきやってますからね。

カプラーは片手では引けないので、苔桃さんの右手は鍵盤から離れました。 正にその瞬間は薫子さんは弾いていたはずですが、この部屋から音はなくなりました。

薫子さんも演奏を中断したようです。

苔桃さんは斜め後ろを振り返ると、運営の方に言いました。

「やり直してもいいですか」

そうして、再び最初から演奏が始まりました。

ソロであったら何も言わずに弾き始めたでしょうか。 何れにしても、私より頼りになる苔桃さんが全てを進めてくれたおかげか、アクシデントがあったものの演奏自体はなかなか良かったかなと思います。

私が最後に弾いた曲はテュルビュラン 。 この曲は8フィートに4フィートを重ねます。

この音色を選んだ話はおさらい会の方でどうぞ。

愛着を持って決めた4+8を忘れるわけがありません。 演奏前にしっかり設定して、4フィートを入れて弾きました。

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完璧!

ミスを数えたらキリがないですが、全体の纏まりも軽やかさもおさらい会とは比べ物にならないくらい名曲になりました。

結構相性のいい曲だと思うので、この曲はレパートリーとして大切にしていこうと思います。

そうして弾き終わって近くの椅子に座りかけて、次の演奏者がカプラーを入れているのが見えました。

苔桃さんは立ち上がり4フィートを外すために楽器に戻ります。

演奏者にそのことを伝え、4フィートをオフにしました。

次の曲、右手もヘ音記号の重い曲です。 高音の4フィートなんて重ねたら台無しです。 弾く前に直せて良かったです。

人は失敗から学ぶと言います。

これだけ操作に手こずったのだから、次の発表会はかなり複雑な操作にしてもイケるのではと、変な自信すら湧いてきました。

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記念品は使用した楽譜のカラーに近い水色のものをいただきました。


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ecrit par coquemomo