【2017/02 及川れいねチェンバロ教室コンサート @スタジオグイド】
天王洲にある寺田倉庫さんの素敵な音楽スタジオ、スタジオグイド 今回の発表会はこちらで行われました。
スタインウェイのピアノとマークデュコルネのチェンバロが常設されている何とも贅沢な空間です。
チェンバロはもちろんのこと、ピアノに歌にダンス、さらにはフルート、ちびっこの演奏まで色とりどりの楽しい音楽の会になりました。
デュオ・ローズもこの日のために1台4手(連弾)に取り組み、華を添えることが出来たかなと思っています。
前回の発表会は一昨年前。そのときは友だちには声を掛けず、ひっそりと参加しました。
でも、今回はブログに書いてしまっていた手前、ヒミツにも出来ないし、何人か声を掛けてみました。
私の服を見越したかのようにピッタリの素敵な花束を持ってきてくれたり、この機会にと沖縄みやげを持ってきてくれたり、前日に大切な予定があり当日も忙しいのに駆けつけてくれたり、行けなくてゴメンねと可愛いお茶とお菓子を送ってくれたり、色々たくさんの優しさを受け取った日でもありました。
さて、招待すると決めたからには、幾つかの準備をしました。
まずは、れいね先生にお願い。
「発表会のチラシなんですが、先生のコンサートのような大きなサイズではなく、ポストカードサイズにしてもらえませんか」
「いいですよー」
アッサリOKが出ました。
A4サイズのチラシは渡すときに大きくて何だか恥ずかしいし、カバンに入れとくと端っこが折れてしまうし、ちょっぴり不便に思ってたのが、解消されました。
それから、選曲。
聴いたことがある曲、チェンバロの魅力が伝えられそうな曲、今までやってきた曲を全部思い浮かべて、ありったけの私を詰め込みました。
My Set List
(solo) #01
J.S.バッハ:平均律第1巻 第1番 プレリュード
J.S.Bach : Das Wohltemperierte Klavier, Erster Teil, Preludium, C-dur, BWV846
(solo) #02
ラモー:一つ目巨人
J-P.Rameau : Les Cyclopes
(solo) #03
モーツァルト:ピアノソナタ第11番 第3楽章(トルコ行進曲)
W.A.Mozart : Klaviersonate A-dur, KV 331
(duo Rose)
タプレ:四手のためのソナタ 第1楽章
J-F.Tapray : Sonate a quatre mains, op.29
チェンバロは強弱がつけられない楽器ですが、レジスターによって音色を変えることが出来ます。
二段チェンバロに多い仕様は、8フィートの弦2列と1オクターブ高い4フィートの弦が1列張られているものになります。
この弦を組み合わせる機構をレジスターと言うわけです。
ラモーの一つ目巨人のような華やかな曲を3列で弾くと、煌びやかさが際立ちます。
トルコ行進曲はフレーズのリピートがあるので、1回目は1列、2回目は2列で弾くと、それだけで趣きが変わります。
などなど、レジスターをフル活用する構成にしてみました。
それにしても、本番とは難しいものです。
いっぱいミスをしたし、聞いている人にわかるミスもしてしまったのは致命的なのですが、それでも最後まで冷静に弾き切りました。
弾き終わったときに見えた先生の笑顔が嘘ではなさそうだったので、レッスンの成果が出せたかな、と思うことが出来ました。
そして、デュオ・ローズについては、
「もう一度弾きたければ、チェンバロの日で」
という先生のお言葉を頂きました。
「チェンバロの日!」は日本チェンバロ協会 主催のチェンバロイベントです。
今年はれいね先生が出演するので聴きに行こうと思っています。
そのイベントの催しのひとつに一般の人が弾くことが出来るフリーコンサートがあって、それのことを指しているわけです。
イマイチだったのか、もう1回弾けば、もっと良くなりそうと思ったのか真意はわかりません。
でも、ソロを弾いて力を使った後に弾くより、連弾だけ弾いて、その後で先生のコンサートがある思うと、今日より上手く弾けそうな気がしてきました。
発表会も終わり、春の訪れと共に新しい曲に取り組みたい気持ちもありますが、デュオ・ローズはもうちょっとだけこの曲と付き合っていくことにしました。
thanks for coming by.
written by coquemomo
憧れのフランス製二段チェンバロの仕様と値段
年が明けたばかりと思っていたのに、早いもので、もう2月になってしまいました。
今年2度目の更新ですが、前回は昨年のレッスンの話でしたので、今回が実質今年のファーストアーティクルです。
就任直後からスピード感たっぷりの小池百合子都知事を少しは見習っていきたいと思っていますが、根が怠惰なのでなかなか難しいです。
そんな私でも、年の初めには、1年の抱負を考えてみたりしていました。
発表会の曲を弾きこなすという現実的な目標から、いつかはバッハのイタリア協奏曲を弾いてみたいとか、しかも豪華絢爛なチェンバロで弾きたい、そしてそんな素敵な楽器が欲しい、というように空想は綿菓子のようにフワフワとふくらんでいきます。
そんな夢でも、やっぱりリアリティは大切です。 欲しい楽器と言って思い浮かぶのは、チェンバロ・フェスティバルで井岡さんと再会して久々に弾いたマーク・デュコルネのフランコ・フレミッシュです。
(注*夢を実現するための技術面での課題につきましては、ここでは触れないでおこうと思います。)
あの時に井岡さんが改めて色々教えてくれたので、仕様を纏めておこうかなと思います。
・・・もしや、買えってことでしょうか?
井岡さんは商売上手の なにわのあきんど ですから、あり得る話です。
さて、頂いた仕様はこちら。
フランコ・フレミッシュ二段鍵盤ハープシコード
(ルッカース1646、タスカン1780)
Franco-Flemish after Ruckers -Taskin, Antwerp 1646, rebuild by Taskin, Paris 1780
(Musee de la Cite de la Musique, Paris)
61鍵
2×8' 1×4' バフ
鍵盤可動A392-415-440
初めて見たときは何のこっちゃでしたので、ちょっと丁寧に見ていきたいと思います。
フランコ・フレミッシュはちょっと置いといて、わかりやすいところからいきましょう。
二段鍵盤は鍵盤が2段あるということで問題はないですね。
ハープシコードは英語でチェンバロのことです。 ちなみにチェンバロはドイツ語になります。
ルッカースのあたりも後回しにして、簡単そうなのは61鍵、そうです、鍵盤が61あるってことですね。
88鍵のピアノに比べると少ないですが、チェンバロで61は大型の楽器です。
この楽器は2段鍵盤なので、丁寧に書くと61鍵×2段、つまり122個の鍵盤がついているわけです。
勝ち負けじゃないけど、ピアノに勝ちましてよ。
音域はここには記載がありませんが、61鍵だと普通はFF〜f3です。
真ん中のドから3オクターブ上のファまで、下は真ん中のドから3オクターブ下のファまでです。
この高い方のファはモーツァルトが多用するキーで、そういう視点で見ると、当時の最高音はここなのだなということがわかります。
バッハをメインに弾くなら、上はレまであれば問題ないと思います。
ちなみに、デュオ・ローズが現在取り組んでいる連弾曲はこの高いファがないと話にならないくらいたくさん出てきます。 逆にファより上の音は一切出てきません。
次の 2×8' 1×4' は弦のことです。
8フィートの弦が2本、4フィートの弦が1本、1つの音に計3本の弦が張ってあります。
具体的には、上の段の鍵盤に8'が、下の段に8’と4'が張られていて、同時に3本鳴らすとかなり華やかになります。
下鍵盤の8'と上鍵盤の8'も少し音質が違います。上鍵盤の方が囁くような感じでその違いも魅力です。
さらにバフストップがついていますので、箏のような音色を奏でることもできます。
続いて、鍵盤可動A392-415-440、ピッチの話になります。この楽器では3つのピッチを使うことが出来るということです。
A415というのが、いわゆるバロックピッチです。古楽では通常A415で合わせるので、今より半音低い音になります。
つまり、ドって鳴らすとシ♭(フラット)に聞こえるわけです。 最初は気持ち悪かったけど慣れました。
でも、これだけだと現代の楽器と一緒に合わせることが出来ません。
そこで出てくるのがトランスポーズ機能です。 440と言うのはモダンピッチなので、ヴァイオリンやフルートと一緒に合わせるにはこれを選びます。
選ぶと言っても、440と書いてあるボタンを押せばいいというわけではありません。
鍵盤可動という文字の通り、鍵盤を横にずらして、半音低い弦を鳴らすという仕組みです。
手順としては、ダミーキーと言えばよいでしょうか、鍵盤の幅の木片を抜いて、鍵盤を横にずらして、空いた方にそれを入れます。
だから、440にトランスポーズ出来る楽器で415しか弾いていなければ、一番上の音の弦はずーっと出番がないってことです。 当然です。どの鍵盤を押しても鳴らないのですから。
もう1つの392は別名ヴェルサイユピッチ。 更に半音、鍵盤を横にずらします。 ここまでついてるとかなり贅沢ですね。
そう言えば一度も弾いたことがないですけれど、モダンピッチから1音低いとなると、かなり違和感を感じるように思います。
さあ、ここまで来たところで元に戻りましょう。
フランコ・フレミッシュでしたね。
フランコは、フランスのという意味で、
フレミッシュはフランドル地方またはそこで発達した芸術様式のことです。
フランドルは美術史などで触れたことがある人も多いかと思います。
ベルギー西部、オランダ南西部、フランス北部を支配していたフランドル伯の領地を指します。
ちなみにフランドルを英語読みするとフランダースになります。ワンっ。
フレミッシュは、チェンバロの歴史的にはイタリアの次に来る様式で、当然のようにアンチイタリアの位置付けとなります。
装飾もシンプルで減衰の早いイタリアンに対し、ラテン語の格言や花や鳥を描き芸術的装飾を凝らし伸びやかな音のフレミッシュ。この後、華やかなフレンチに時代は流れていきます。
さて、チェンバロはピアノが流行って一旦途絶えてしまうので、現在あるチェンバロは博物館にあるものを復元したものです。またはそこに別の楽器の要素を足したり、オリジナリティを加えたりすることもあります。
この楽器のオリジナルはというと、
(ルッカース1646、タスカン1780)
Franco-Flemish after Ruckers -Taskin, Antwerp 1646, rebuild by Taskin, Paris 1780
ルッカースがアントワープで1646年に作ったものを、タスカンが1780年にパリで改造したものってことです。
ルッカース一族はフレミッシュを代表する有名な工房で、パスカル・タスカンはフランス様式を代表するチェンバロ製作者の1人です。
これが曲だったら、ルッカース作曲、タスカン編曲といつたところでしょうか。
でも、このタスカンならではの装飾を考慮するなら、タスカンはアヴェマリアにおけるグノーに近いかもしれません。
Musee de la Cite de la Musique, Paris
オリジナルはパリのMusee de la musique (ミュゼ・ドゥ・ラ・ミュズィック)にある置いてあるんですね。
Musee de la musiqueなら、れいね先生のオススメで昨年の3月に行ってきました。
あれ、じゃあ、私はオリジナルの楽器を自分の目で見てきたってことではありませんか!
そう、見惚れてしまう楽器がたくさんでした。
歴史的価値の芸術品なので、普通の人が弾くことは出来ませんが、見てるだけでもかなり幸せです。
うっとり。
ちなみにオリジナルはこちらです。
たくさん撮ったとはいえ、知らずにキチンとカメラに収めた自分を褒めてあげたい。
しかもブログに使ってるんですよね。
私、この楽器と結ばれる運命にあるのではないかしら。
さて、最後に皆様お待ちかねのお値段の話。
「価格は変わってしまうので、目安として見ていただければと思います」
とは、オワゾリールハウスの井岡さんのメールに書き添えられていた注意書きです。
でも、なぜ金額が変わってしまうのでしょうか。 要因は大きく2つあります。
1.オワゾリールハウスが扱っているのはマーク・デュコルネの工房で作った楽器です。 デュコルネが値上げすれば、当然オワゾリールでの売価も上がります。
2. マークデュコルネはフランスのチェンバロ工房です。 通貨は当然ユーロになります。 つまり、為替の影響を受けるわけです。
自分仕様の楽器をオーダーする場合は、最新かそれに近いレートになります。
既に日本にある在庫を購入する場合は、レートの見直しをする必要はなくなりますが、それでも実際のレートと大きく乖離してくると見直しを行うこともあるそうです。
そのようなことで、幾らで買えますって言いづらいわけです。
だから、買うときにその時の値段を聞いてみてね☆〜(ゝ。∂)
〜おしまい〜
と、まあこれではここまで読んで下さった方に申し訳ありませんので、2016年7月時点でのざっくりとしたお値段は……
今回紹介した仕様でシンプルなモデルですと、600万円台半ばとのことでした。 それに消費税が加算されるので、実際に支払う金額は700万円近くになると思われます。
チェンバロフェスティバルで弾かせていただいたモデルは脚の形が特殊なので、この脚を選ぶことにより、百数十万円上がります。 1本数十万円の脚……ランウェイを堂々と歩くくらいなら朝飯前でやってくれそうです。
他にも装飾のオプションをつけていくと十万単位で価格が跳ね上がるので、オーダーする場合は悩みますね。 でも、段々値段の感覚が麻痺しそうで、家を建てるときに色々付けちゃうのと近いかもしれません。
比較的安価な二段チェンバロですと、以前書いた通り300万円くらいですから、この楽器はよい材料を使って素晴らしい製作家によって作られたものであるということがわかります。
異常な円高ユーロ安がなければ、凡そ値段は上方にしか修正されないので、早く買った方がよいのですが、夢で始まった今回の記事は、現実の厳しさを痛感したところで、幕引きとさせていただこうと思います。
merci de votre visite.
ecrit par coquemomo
〜呼吸〜 チェンバロ レッスン.:*・゜゜201612 **・゜゜
2016年最後のレッスンは、贅沢にデュオローズのレッスン&ソロのレッスン、ランチ付です⸜( ´ ꒳ ` )⸝
ソロのレッスンは自分のレッスンに スーパーチェンバロレッスンのLIVE (薫子さんのレッスンの聴講) も!
ローズのレッスンでは、12月らしく「くるみ割り人形」の「金平糖の踊り(2台チェンバロヴァージョン)」もやりました。
今年の丸の内のクリスマスイベントは、テーマがくるみ割り人形でした。
特に丸ビルでは、くるみ割りの音楽と映像のプロジェクションマッピングが行われていました。
それぞれこのイベントを見ていたこともあり、日程的にはアフタークリスマスなのですが、金平糖やりたいねとなったわけです。
昨年の金平糖は大笑いでしたが、今回は曲らしくなってまいりました。
チェレスタでは可愛らしい金平糖の踊りも、チェンバロではちょっと怖い雰囲気にもなり、クリスマスよりもハロウィンって感じ?と思っていたら、薫子さんも「ティムバートン風ですね」と言っていました。そんな感じです。
短い曲なのでバッハなどの大作にプラスして弾きたいのですが、ちょっと問題があります。その日の1回目がうまく弾けないのです。
臨時記号に騙されまくりの初見泣かせな曲なので、他の曲と一緒に弾ける気がしません。
胸を張ってこの曲をレパートリーと言うには、まだ時間がかかりそうです。
そして、今日の本題は、2月の発表会で演奏する連弾曲です。
この曲の形が決まらないと年を越せません!
久々に本気モードで頑張りました。
いや、いつも本気ですが、今日の私はひと味違うわよってなもんです。
何せ現実的にまとまったレッスンが出来るのは、1月に自主練1回、2月にれいね先生のレッスン1回、自主練1〜2回、当日のリハと、本番までにふたりで合わせられるのはほんの数回です。
毎日合わせられるって凄く恵まれた環境か、それに全てを賭けているか、とにかく当たり前のことではないのですね。
だから、もしそうであれば、そのことを大切にしてほしいし、私は私の出来る精一杯をするしかなくて、残された回数を丁寧にやっていきたいと思います。
私たちは最初この曲にモーツァルトを感じました。 時代的にも同じ頃の作品ですし、明るく華やかな感じがモーツァルトを彷彿させると思ったのです。
でも、この曲を作ったのはジャン・フランソワ・タプレというフランスの作曲家で、れいね先生はこの曲の譜面からちゃんとフレンチを感じとりました。
YouTubeですら見つけられなかったこの曲をきちんと優雅に仕上げていくことが出来そうになってきたのはれいね先生のおかげです。
今回のポイントは、切り替えと空白だったように思います。
場面の展開するところで駆け込まずにほんの少しの空白を置く。
休符があるわけではないけれど、きちんと息継ぎをすることによって、次の場面にスムーズに移行できます。
でも、これがソロの時より数段難しいのです。間を空けすぎたら遅れちゃうというリスクがあります。
これは合わせながら見つけていくしかなくて、呼吸を合わせる、しかもよいタイミングでという、アンサンブルをやっていく上では切り離すことの出来ない課題です。
さらに人数が増えてくると指揮者の登場になるわけで、指揮者がいれば合わせるのは楽になります。
でも、アイコンタクトや息づかいで上手く合ったときは、夢のような心地がします。 指揮にはこちらから合わせるけれど、デュオだと合わさるって感じがするところが、私は好きです。
あとは、テンポが早くなってしまったときに、とにかく戻すこと。
テンポを戻すという対処はどの曲でもそうなのですが、この曲は特に早くなりがちな要素が詰め込まれてるので、そのことを強く意識しておいた方がいいように感じます。
このブログで2016年を振り返ってみると、良いコンサートに恵まれた年であることに気がつきました。
2017年のコンサートは、5月のチェンバロの日に、れいね先生が現代曲(!)を演奏するということなので、それを楽しみにしています。
それでは、2017年があなたにとって素敵な年でありますように。
merci de votre visite.
je vous souhaite tres bonne annee 2017.
ecrit par coquemomo
〜小指を使いこなす〜 チェンバロ レッスン.:*・゜゜201611 **・゜゜
発表会の日程が決まったということで、11月はデュオローズでのレッスンを受けたかったのですが、薫子さんと私の休みが合わず、今月もソロのレッスンになりました。
と言っても、ソロ曲の出来が順調なわけでもなく、どちらかと言えば芳しくないので、むしろ好機と捉えるべきかもしれません。
レッスンに来ると必ず何か発見があります。
れいね先生がいて教えてくれるから当たり前なのですが、1人では気がつけないことがたくさんあって、これ全部出来るようになったら神の領域では(*⁰▿⁰*)と武者震いがします。
当然、神にはほど遠く、忘れてしまうことだらけで、そもそも出来ないことばかりです。
神ならぬ身にて今日最も課題に感じたのは
小指
です。
「ちょっと、そこ、もう一度弾いてもらえますか」
ああ、やっぱり。
このフレーズ、何か、思うように鳴らなくて、鍵盤を打鍵して出てくる音には、深みがありません。
れいね先生のような満ち足りた音はどこから出るのでしょう。
いつも先生は私の右に座ります。 先生が見せてくれる見本は決まって上の方の音になるので、この楽器、高音の方がいい音がするんじゃない?と疑ったこともありますが、そんなことはありません。
私に何かが足らないのです。
それを証明するかのように、連弾曲で先生が左に座ったときは、低音が美しく響きました。
鍵盤を交換しても解決はしないのです。
「指を立てられますか?」
そう言うと先生は小指の第一関節と第二関節を曲げて、コの字のように形を作りました、
あ、私の小指は定規のように伸びきっちゃっています。鍵盤の上で倒れて気を失っているようです。
棒でバチバチ叩くようにするのではなく、指の関節を使って鞭のようになれば、もう少し豊かな音になるかもしれません。
必死に真似しますが、どこか形が違います。
「あ、でも爪が鍵盤に当たっちゃ、ダメです。弾くのは指の腹で」
私の爪はちょっとおかしくて、人差し指と小指は長く、中指と薬指は短いのです。
別に願掛けで伸ばしているとかではなく、元からほんの少し小指の爪のピンクの部分が長いのです。
大した違いではないので、日常生活では何ら支障はありません。
でも、鍵盤楽器奏者としては、深爪ギリギリまで切っても長いと言うのは不利な感じがします。
だからと言って細かい個人差で出来ないと言ってしまうと、そこで全てが終わります。 ちょっと気をつければ、形は少し違っても、同じような結果が得られるはずです。
自分の身体でのベストポジションを模索します。
「小指をコントロールするのは手の平の側面の筋肉だと思うので、ここを使ってることを意識して動かしてみてください」
そういえば、小指以外の指で弾いてると段々小指が上がってきてしまうことがありますが、これも同じ原因のように思えてきました。
コの字の角を広げたり狭めたりしながら音を出してみます。
難しいです。
形に気を取られすぎて指に変な力が入ってしまっては逆効果です。
そうして、かなりの時間、小指のフォームを何度も何度も確認しながら、しっかりした音を出す訓練を繰り返しました。
一朝一夕には無理そうですが、ヒントが見えてきました。
あとは宿題にしましょう。
帰り際、ヴァージナルを見ると楽譜が置いてありました。
「てをぐにゃぐにゃしない」
もーさん(先生の娘)の楽譜に書き込みがしてあります。
美しい大人の字体だけれど、れいね先生の字ではなさそうなので、もーさんのピアノの先生が書かれたものだと思われます。
楽しそうにレッスンを受けているもーさんを思い浮かべながら、私はもう一度自分の手を見つめて、それから手が取るべき形をイメージしました。
きっと、出来るはず。
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written by coquemomo
〜楽譜ホルダーを作ろう!〜 カルトナージュ レッスン
コピーしたペラ紙の楽譜を使うことってありますか?
コピー譜は気がつくと溜まっていき、段々見つけられなくなるので、楽譜は冊子の形で持っていたい派ですが、最初の書き込みは消したくなるくらい酷いので、最近はまずコピーして使うことにしてます。
でも、コピー紙を譜面台に置くと、ヨレっとするのです。
このヨレっと問題対策のため、コピー譜をクリアファイルに入れるのですが、書き込む度に出し入れするのが面倒で、結局出しっぱなしになります。
そこでコピー譜を使うときは、後ろに冊子の楽譜を置いて誤魔化していたものの、ずーっと気になっていたこのヨレっと問題を、この度、抜本的な解決を目指す事に致しました。
解決案として、厚紙を買って来て、譜面台に置いておけばよいかなと思ってはいたのですが、中途半端な厚さの紙だと私の性格から厚紙が他の紙に埋もれること間違いありません。
聖歌隊が持ってそうな感じのが欲しいんだけどなあ…どこで売ってるのでしょう?
ネットで検索しているうちに、カルトナージュで自作するという方法に辿り着きました(*'▽'*)
カルトナージュはフランス語。 カルトンが厚紙とかボール紙という意味で、カルトナージュは厚紙で作ったものとか厚紙の箱のような意味になります。
ここでいうカルトナージュは、そこから少し派生して、厚紙に布や紙を貼って、粋に仕上げたものを指します。
おしゃれな布でデコられたフォトフレームとかトレイとかティッシュボックスとか、目にしたことがあると思います。 あれをカルトナージュっていうのですね。
さて私は、カルトナージュどころか、工作的なことは小学校卒業以来無縁です。
全くもって1人で作れる自信がありません ( ̄O ̄;)
そうだ、レッスンを受けよう!
カルトナージュの体験レッスンを探しましたが、体験だと作れるものが指定されているので、楽譜ホルダーを作ることは出来ません。
使う人が限定されるので仕方ありませんが、それでも、私は楽譜ホルダーを作りたいのです!!
そうして見つけたのが、Ange & Rose (アンジュアンドローズ)。
Ange & Rose は、主宰しているSatomi 先生のご自宅でレッスンを行っています。
体験レッスンはないのですが、フリーコースという単発レッスンのコースで楽譜ホルダーを作ることができそうです。
問い合わせてみると、楽譜ホルダーは初心者でも大丈夫ということで、早速レッスンを申し込みました。
緊張の面持ちで向かった当日、駅からはかなり近いので迷わずに着きました。
チャイムを押すと穏やかな笑顔の女性が現れました。
うん、素敵な人そうで良かったです。
Satimi先生のご自宅は美しいカルトナージュの作品でいっぱい。 インテリアもとっても洗練されています。
「2面にしますか? 3面になさいますか?」
楽譜ホルダーは2面と3面の2種類を用意しているそうです。
3面あると便利そうだけど、作るのが2分の3倍大変そうなので、2面にしておきました。
作業は主に切ることと貼ることですが、やり慣れなくて、あたふたしまくりです。
そして、こんなに大量のボンドを使ったのは生まれて初めて。
今日は私のボンド記念日です。
Satomi先生の多大なる手助けの元、完成した作品がこちら。
☝ 閉じたところ
☝ 開いたところ
表側がアリス、内側がリバティという何とも乙女仕様です(^^;;
よく見るとヨレてたり、曲がってたり、出来が甘いですが、遠目で見れば、初めてにしては良い出来な気がします。
私は手先がかなり不器用なのですが、先生が助けてくれるので、楽しく作れました。
帰って使ってみると、コピー譜はヨレっとしないし、書き込む時も楽だし、これはかなり便利です!
もっと早く辿りつけば良かったです。
別のものも作ってみたいなあ。
merci de votre visite.
ecrit par coquemomo
link to Ange & Rose ▼ ameblo.jp
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about harpsichord (cembalo)▼ lepetitclavecin.hatenablog.com
〜発表会告知〜 チェンバロ レッスン.:*・゜゜201610 **・゜゜
子供の頃の習い事は週1回くらいが一般的でしょうか。では、おとなの習い事は、どのくらい通うのがいいのでしょうか?
私の場合、週1はこなせませんでした。 月のどこかは必ず忙しくて破綻します。
振替って素敵な制度があることもありますが、その振替を消化できないんです。
振替を使い切れないくらいだから、日にちが自由な月4でもダメです。 気がつくと月3ペースになり、いつの間にか月2しか行かなくなり、諦めて退会の道を選ぶことになります。
れいね先生のチェンバロレッスンは特に回数を決められていません。 何となく月1回で始めて、それがマイルールになりました。
その月1回も毎月決められた日ではないので、1ヶ月半以上空くこともあれば、2週間未満になってしまう時もあります。
つまりですね、今回は後者だったので、練習が足りなかったとまあそんな事情です。
こういうのを言い訳って言います。
練習不足すぎてレッスン時間が余ってしまいそうです。どうしようかなあ。
ちょっと悩んで、昔習った曲を1曲プラスして持って行くことにしました。
「そろそろ発表会をやろうかと思って」と先生に言われ、どんな曲がいいかなと考えていたら、何となくこの曲を昔より美しく弾けたらと思ったのです。
時間が余りそうって理由で持って行くことにしたのに、レッスン当日はいの一番にこの曲を弾きました。
「チェンバロ弾きらしくなりましたねー」
そうですかー⸜( ´ ꒳ ` )⸝
装飾音もないシンプルな分散和音の曲でチェンバロらしさを出せたということは、タッチやアーティキュレーションの付け方がチェンバロに合ってきたということかなあ、嬉しいです。
昔は教わらなかったことも色々と教えてもらい、曲に深みが増してきました(多分)。 この曲も発表会で弾く曲の候補にしましょう。
そして、レッスンから2週間後、発表会は2月でとの連絡がありました。
練習しないと( ̄^ ̄)ゞ
thanks for coming by.
written by coquemomo
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〜三連符と八分音符 どうやったら弾ける?〜 チェンバロ レッスン.:*・゜゜201609 **・゜゜
私はアクション映画を観ると思わず回し蹴りをしてしまうタイプですが、デュオ・ミュゲのコンサート の後は自分がチェンバリストのような気分になっていました。
コンサートの翌日、部屋でスピネットに向かい、ラモーの楽譜を手に取りました。 ページをパラパラめくり "Les Niais de Sologne" にたどり着きました。
れいね先生がコンサートでソロに選んだラモーの曲です。
私はこの曲を弾いたことはありません。楽譜も今日初めて見たくらいです。でも、今日は弾ける気がします、完全に思い込みですが。
大きく呼吸をして、弾き始めました。
もちろん全然うまくありません。装飾も付けてる余裕がありません。でも、何とかこのページの最後まで弾ききりました。
辛うじてどんな曲かわかるのが救いでしょうか。
辛うじてのくせに、調子に乗ってページをめくります。
“1er Double des Niais”
第1変奏ってことですよね。パッと見た音符の分量からは前のページと同じくらいの難易度を考えていたのですが、ここからが地獄への一本道。
右手はずっと三連符、左手は八分音符という世界が待っていたのです。
わお。無理!!
れいね先生があまりに軽やかに弾いてたので、会場では全然気がつきませんでした。
でも、冷静に曲を思い出すと、確かに三連符と八分音符です。このパターン、有名なところだとドビュッシーのアラベスクで登場しますね。
コツとかないのかなあ。
ちょっと頑張ってみたものの、曲の輪郭すらボヤけたままだったので、この日に弾いたあとはもう手をつけることはありませんでした。
あれから約1ヶ月、そんなこともすっかり忘れていたのですが、レッスンに来て、れいね先生の顔を見て、この曲のことを思い出しました。
思い切って聞いてみましょうか。
「このページ、全然歯が立たないのですが、どうやって練習したら弾けますか?」
「三連符の2個目と3個目の間に左手の2拍目を入れるような感じかな」
と言って、冒頭を弾いてくれました。
うんうん、確かに入ってる と思ったそばから
「逆にあんまり考えない方がいいかも」
何ですってー!
「右はこんな感じ、左はこんな感じで、あとは拍の頭を合わせる」
心地よい響きに聴き惚れてしまいます。ウットリ( ´ ∇ ` )
「急に出来るようになります」
それはウソだーー!
「私も最初出来なくて『違う!』って言われましたよ。
右手で三連符弾いてみてもらえますか」
片手なら出来ます。私が弾きだすと、2小節目に入ったところで、先生は左手の旋律を弾き始めました。
えーー!待って!! つられちゃう。
自分のリズムを崩さず、先生の音を聞きすぎず、でも重なりを微かに感じます。
「そんな感じです。頭で考えてやるのなら……」
12個の丸を書いて、それぞれ2個おき、3個おきに黒く塗ってみせてくれました。
なるほどね。音楽って数学だなと思いながら、ちょっとだけこの曲のハードルが低くなるのを感じました。
今やってるのが終わったら、この曲をやりたいなあ。
やるなら、もちろん、れいねラモーの完コピ目指して頑張ります!
あれ? ちょっと下がったハードルが棒高跳びのバーのように空高く上がってしまったような……。
いや、単なるイメージですよ。現実はそんなに甘くないのです。
merci de votre visite.
ecrit par coquemomo
about harpsichord (cembalo)▼ lepetitclavecin.hatenablog.com